会社組織と個人事業の選択

法人組織と個人事業はどちらが良いのでしょうか?

個人事業について

 個人で事業を行う場合には、売上金額から売上原価(商品販売であったら売り上げた商品の仕入代価)や従業員の給料などの諸経費を引いた残りが経営者の所得となりこれに対して所得税や住民税が課税されます。 

 経営者には自分に対する給与という経費は認められません。

 これは自分で稼いだ利益を自分に対して給与を支払うということではなく、最後に残った利益が最終的に自分の取り分になるということです。

 この場合に課税される所得は「事業所得」という所得に分類されます。

法人で行なう事業について

 法人で事業を行う場合には、やはり売上金額から売上原や諸経費を引いた残りが法人の所得となり、法人税等が課税されることとなります。
 
 法人の場合には社長も従業員と同様に給与をもらうことになります。 

 従って、この場合に個人が課税される所得は「給与所得」という所得になります。

個人と法人の違い

それでは、事業所得と給与所得はどう違うのか?という本題に入りますと、「給与所得」の方が所得税と住民税は安くなります。

 これは「事業所得」はそのまま課税の対象となるのに対して「給与所得」は給与所得控除というものがあり、いわば給与取りの必要経費が認められるため、課税される所得が少なくなる訳です。

法人のメリット

1. 信用力 法人の場合には個人より社会的に信用力が高いため、各種取引が個人事業より有利になるケースが多い。

 →法人としか取引をしない会社もあります。

2. (個人の所得に対し)給与所得控除を受けられる 個人経営の場合の利益は事業所得としてそのまま所得税が課税されるのに対し、法人経営の場合は法人から経営者等に対して給与として支払うため、もらった本人は給与所得となり、給与所得控除後の所得に対して所得税が課税されるので事業所得で課税されるより有利になる。

3. 親族に給与を出しやすくなる

 個人事業の場合と比べて親族に給与を出しやすくなり、税率、給与所得控除の面で恩恵を受けやすくなります。

4. 資金面

  株主から出資を受けるため、資金の調達が個人よりは容易であること(ただし、だれも株主となってくれる人がいない場合は自分で用意するため、個人と同じ)。

 金融機関からの資金調達でも有利。

5. 累進税率の回避

 法人税の税率は一定の率となっていますが、個人の所得税率は累進税率とよばれる税体系が取られており、所得が多ければ多いほど高い税率になっていきます。

 最近の傾向としては諸外国との均衡から、税負担が法人も個人もずいぶんと安くなってきており、今後は消費税等により税金をまかなうことになりそうです。

6.青色欠損金の繰越

 法人の場合、青色申告をしていれば赤字がでた場合でも9年間はその赤字を翌期以降に繰越ができます。 

 → 個人事業の場合は、3年間です。


その他にも生命保険料を会社の経費にできる(商品による)、社長に退職金を出せる、自宅家賃を社宅として経費にできる場合がある、相続対策がしやすくなる、赤字の場合などは減価償却を棚上げできる、等々利益(所得)が大きい場合の節税策は増えます。

法人のデメリット

1.役員変更

 株式会社の場合には、取締役や監査役の変更登記を一定期間ごとに行わなければならないため、登記費用や手間がかかる。

 任期は最長10年にできるが、もしこれを忘れて12年間何の変更登記もしないと、みなし解散になるおそれがある。

(合同会社の場合には別に行う必要はありませんが....。)

2.赤字でも税金がかかる

 法人の場合、赤字のときでも法人住民税の均等割という税金を最低7万円払わなくてはなりません。

3.設立費用

 会社の設立には法定費用だけで株式会社で20万円以上かかります。専門家に依頼するとこれを含め30万~40万程度かかる場合が多い。

4.社会保険

 従業員が5人未満でも社会保険(厚生年金、健康保険)の加入が義務付けられ、負担が増える。ただし加入したほうが人材確保には有利で、社長も国民年金より厚生年金のほうが将来の受取額が大きくなる。

 その他交際費の一部が経費にできなくなる、赤字でも事業年度中は役員報酬が変更しにくい、会計事務負担が増える、個人事業より税務調査が多い、等々のデメリットがあります。


 最終的な損得は、今後事業を行う場合にどれくらい利益がでるとか?どのような事業を行うか?などによって「どっちが得か?」という判断がくだせることになります。


     

会社設立の準備について


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