>繰延資産について

1.繰延資産のポイント

・繰延資産とは前払費用及び資産の取得価額とされる費用以外の費用で、支出の効果が1年以上に及ぶものをいいます。

 具体的には創立費や開業費など会社法上のもののほか、共同アーケードの負担金や賃借建物の権利金などがあります。
 (法2二五,令14)

・損金の額に算入される金額は、償却費として損金経理した金額のうち繰入限度額に達するまでの金額です。

 したがって会社が費用に計上しなければ法人税法上損金とはなりません。

・減価償却資産と同様に少額繰延資産(20万円未満=199,999円以下)は、一括損金とすることができます。

・繰入限度額は任意償却できるものと償却期間の月数に応じて均等償却するものがあります。

2.税法上の繰延資産の範囲

(1)会社法上の繰延資産
    
①創立費 ②開業費 ③開発費 ④株式交付費 ⑤社債等発行費

(2)税法特有の繰延資産  

 次に掲げる費用で支出の効果が1年以上に及ぶもの(前払費用及び資産の取得価額とされる費用を除きます。)

①  自己が便益を受ける公共的施設又は共同的施設の設置又は改良のために支出する費用

②  資産を賃借し又は使用するために支出する権利金、立ちのき料その他の費用

③  役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用

④  製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用

⑤  その他自己が便益を受けるために支出する費用

3.繰延資産の償却について

(1) 任意償却を行うもの(令64①)  会社法上の繰延資産

 償却限度額 : 残存簿価

 税法上は好きなときに好きなだけ行ってよいこととなっています。ただし、会社が損金経理した部分に限ります。

(2) 均等償却を行うもの(令64②)   税法特有の繰延資産

 償却限度額 :  繰延資産の額×当期の月数(支出事業年度の場合は支出日から期末までの月数)÷償却期間の月数      ・月数は1月未満の端数切上げます。

(3)少額繰延資産  

 均等償却を行う繰延資産でその支出額が20万円未満であるものについては、その支出事業年度において、損金経理した場合には、その金額は全額損金の額に算入されます。

4.繰延資産の償却期間

会社法上の繰延資産は任意償却ですので、償却期間の概念がありません。

 税法特有の繰延資産はの償却期間は別段の定めがあるものを除き、次のようになります。(基通8-2-1)

 ・固定資産を利用するために支出したもの ~ その固定資産の耐用年数を基礎として算定した期間

 ・一定の契約をするに当たり支出したもの ~ その契約期間を基礎として算定した期間

また、以下の(1)~(5)については通達により償却期間が定められています。(基通8-2-3)

(1)公共的施設等を設置するための負担金等

 ・公共的施設の負担金(基通8-1-3)

①  その施設等がその負担した者に専ら使用されるものである場合~その施設等の耐用年数の7/10の年数

②  ①以外のもの~その施設等の耐用年数の4/10の年数

 ・共同的施設の負担金(基通8-1-4) ①  その施設がその負担者又は構成員の共同の用に供されるものである場合又は協会等の本来の用に供されるものである場合

  イ.  その施設の建設等に充てられる部分は、その施設の耐用年数の7/10の年数

  ロ.  土地の取得に充てられる部分は45年

②  商店街等の共同のアーケード、日よけ、アーチ、すずらん灯等負担者の共同の用に供されるとともに一般公衆の用にも供されるものである場合~5年(その施設の耐用年数が5年末満である場合には、その耐用年数)

(2)資産を賃借するための権利金等

 ・建物を賃借するために支出する権利金等(基通8-1-5(1))

  1. 建物の新築の際に所有者に支払った権利金等の額がその建物の賃借部分の建設費の大部分に相当し、かつ実際上その建物の存続期間中賃借できる状況にある場合~その建物の耐用年数の7/10に相当する年数
  2. ・建物の賃借の際に支払った(1)以外の権利金等で、契約、慣習等によってその明渡しに際して借家権として転売できるものである場合~その建物の賃借後の見積残存耐用年数の7/10に相当する年数
  3. (1)及び(2)以外の権利金等の場合~5年(契約による賃借期間が5年未満であり、契約の更新の際再び権利金等の支払を要することが明らかであるときは、その賃借期間)
 ・電子計算機等の賃借に伴って支出する費用(基通8-1-5(2))

その機器の耐用年数の7/10に相当する年数(その年数が契約による賃借期間を超えるときは、その賃借期間)

(3)役務の提供を受けるための権利金等 ノーハウの頭金等(基通8-1-6)~5年

(設定契約の有効期間が5年未満である場合において、契約の更新の際、再び一時金又は頭金の支払を要することが明らかであるときは、その有効期間の年数)

(4)広告宣伝用資産の贈与費用   広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用(基通8-1-8)~その資産の耐用年数の7/10に相当する年数(その年数が5年を超えるときは5年) (5)その他自己が便益を受けるための費用

 ・スキー場のゲレンデ整備費用(基通8-1-9)~12年

 ・出版権の設定の対価(基通8-1-10)~設定契約に定める存続期間(設定契約に存続期間の定めがない場合には3年)

 ・同業者団体等の加入金(基通8-1-11)~5年

 ・職業運動選手等の契約金(基通8-1-12)~契約期間(契約期間の定めがない場合には3年)

  (注)上記によって計算した場合に、償却期間に1年末満の端数があるときは、その端数を切り捨てます。




GO TOP

法人税教室へ




HOME