減価償却について

1.減価償却のポイント

(1)企業会計では適正な期間損益計算を行うため、取得した資産を減価償却費として適正に費用配分しますが、法人税法上損金の額に算入される金額は、償却費として損金経理した金額のうち繰入限度額に達するまでの金額です。

 したがって会社が費用に計上しなければ法人税法上損金とはなりません。(法31)

(2)償却方法は会社が選定した償却方法により計算しますが、会社が選定していない場合には、有形減価償却資産については定率法により計算します。

(平成10年4月1日以降に取得した建物については定額法のみとなります。)

(3)定率法とは期首の帳簿価額に一定の率を乗じて計算しますが、当初は減価償却費の額が多く計上することができ、しだいに減価償却費の額が少なくなるという特徴があります。

(定率法の償却率は定額法の償却率より大きくなっています)

(4)定額法は取得価額から残存価額を控除した金額に一定の率を乗じて計算しますが、減価償却費の額は毎年同額となります。

(定額法の償却率は定率法の償却率より小さくなっています)


定率法の償却率が変わりました

(200%定率法)~平成24年4月1日以降取得分から適用開始

 平成24年4月1日より前の開始事業年度で平成24年4月1日以後終了事業年度(改正事業年度)において取得したものは、平成24年4月1日以後の取得であっても250%定率法による償却限度額の計算ができるとされています(改正法令附則3条2項)。

2.会社の経理と申告調整

(1)会社の仕訳

 (借方)減価償却費×××(貸方)減価償却資産×××

(2)申告調整(法人税申告書の別表四)

[算式]

 ①償却限度額~税法上の定めにより計算します
 ②償却超過額会社計上償却費-①=×××償却超過額(加算・留保)

・会社が計上した減価償却費が税務上の償却限度額を超えている場合には、その超えている金額は減価償却超過額として(別表四)で加算されます。

・会社計上償却費が税務上の償却限度額の範囲内の場合には、(別表四)では減算されずにそのままとなります。

3.減価償却資産の意義(法2二十四、令13)

 減価償却資産とは、建物、構築物、機械及び装置、船舶、工具・器具及び備品、鉱業権その他の資産で償却すべき一定のものをいいます。

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4.減価償却資産の取得価額

 減価償却資産の取得価額は、次のそれぞれの金額と「その資産を事業の用に供するために直接要した費用の額」の合計額となります。(令54)

(1)購入した場合~購入代価(引取運賃、荷役費、運送保険料等の付随費用を含みます。)

(2)自己で建設等をした場合~建設等のために要した原材料費、労務費及び経費の額

(3)自己が成育させた牛馬等~牛馬等の購入代価等又は種付費及び出産費の額と成育のために要した飼料費、労務費及び経費の額

(4)自己が成熟させた果樹等~果樹等に係る購入代価等又は種苗費の額と成熟のために要した肥料費、労務費及び経費の額

(5)合併により受け入れた場合~被合併法人がその合併事業年度においてその資産の償却限度額の計算の基礎とすべき取得価額

(6)出資により受け入れた場合~その資産の受入価額(付随費用を含む。)ただし、受入時の時価をこえる場合には、受入時の時価

(7)上記以外の方法により取得した場合~その取得時の時価

5.減価償却資産の償却方法 (令48)

(1)有形減価償却資産(建物、構築物、機械及び装置、船舶、工具・器具及び備品等で鉱業用減価償却資産以外)~定額法または定率法のうち会社が選択した方法。

・会社が償却方法を選択していない場合には定率法(法定償却法)によります。

法人の場合の法定償却方法は定率法ですが、個人の場合の法定償却方法は定額法となりますので、注意してください。

(平成10年4月1日以降に取得した建物については定額法のみとなります。)

(2)無形減価償却資産{工業所有権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権)等で鉱業権及び営業権以外}~定額法

(3)生物~定額法

(4)営業権~任意償却(平成10年4月1日以降取得分については5年間の均等償却となります。)

(5)鉱業権~定額法、生産高比例法のうち会社が選択した方法

・会社が償却方法を選択していない場合には生産高比例法(法定償却法)によります。

(6)鉱業用減価償却資産(鉱業権以外)~生産高比例法、定率法、定額法のうち会社が選択した方法

・会社が償却方法を選択していない場合には生産高比例法(法定償却法)によります。 6.償却方法の選定 ・資産の種類ごと(機械及び装置については設備の種類ごと)に選定します。

・2以上の事業所を有する場合は事業所単位で選定することができます。

・法人が償却方法を選択しなかったときは法定償却方法によります。


7.償却費として損金経理した金額(法31、基7-5-1)

 償却費として損金経理した金額には、法人が減価償却費の科目で費用に計上した金額のほか、次のものも含まれます。

(1)前期以前の償却超過額で当期に繰越された金額(繰越償却超過額)

(2)取得価額に算入すべき付随費用を費用処理した金額

(3)圧縮限度超過額

(4)修繕費として費用処理した金額のうち資本的支出とされる金額

(5)無償又は低額で取得した減価償却資産に附した帳簿価額が税法上の取得価額に満たない場合のその差額

(6)除却損又は評価損のうち損金の額に算入されなかった金額

(7)少額(おおむね60万円以下)な資産又は耐用年数の短い(3年以下)資産を消耗品等として費用処理した金額

(8)ソフトウエアの取得価額に算入すべき金額を研究開発費として損金経理した場合のその額

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8.償却限度額の計算

(1)原則(令48の2①一、令48の2①二) (1-1)平成19年4月1日以降に取得したもの

   ①定額法
     償却限度額=取得価額×定額法の償却率
     残存価額(帳簿価額)が1円になるまで償却できます。

   ②定率法
    ・調整前償却額(注1)≧償却保証額(注2)の場合
     償却限度額=税務上の期首帳簿価額×定率法の償却率

    ・調整前償却額<償却保証額の場合 
     償却限度額=改定取得価額(注3)×改定償却率(注4)

(注1)調整前償却額:税務上の期首帳簿価額×定率法の償却率

(注2)償却保証額:取得価額×保証率。保証率は耐用年数によって決まっています。

(注3)改定取得価額:最初に調整前償却額<償却保証額となる事業年度の税務上の期首帳簿価額

(注4)改定償却率:耐用年数によって決まっています。

(1-2)平成19年3月31日以前に取得したもの

  ア.前事業年度までの各事業年度においてした償却費の累積額が取得価額の95%相当額(従前の償却可能限度額)に
    到達するまで(残存価額(帳簿価額)が取得価額の5%になるまで)
   ①定額法
     償却限度額=取得価額×0.9(注5)×定額法の償却率

(注5)無形減価償却資産の場合は残存価額が0であるため0.9を掛けません。以下同じ。

   ②定率法

     償却限度額=期首帳簿価額×定率法の償却率

  イ.95%相当額に到達する年事業年度

     償却限度額=期首帳簿価額-取得価額の5%

  ウ.95%相当額に到達した事業年度の翌事業年度以降

     償却限度額=〔取得価額-(取得価額の95%相当額)-1 円〕×償却を行う事業年度の月数/60

     (残った取得価額の5%分を5年間で1円まで償却しています)


(2)期中供用資産の償却限度額(令59①一)

事業年度の途中で減価償却資産を購入(使用)した場合には、下記のように月数按分します。

事業年度全期間供用した場合のの償却限度額×事業供用日から期末までの月数(1月未満切上げ)÷当期の月数

(3)少額減価償却資産の特例(令l33) 次のいずれかに該当する場合には、その取得価額の全額を事業供用年度に損金経理した時は、その減価償却資産の全額が損金の額に算入されます。

・その資産の使用可能期間が1年未満の場合

・その資産の取得価額が10万円未満(99、999円以下)の場合

一括償却資産(令132の2)

取得価額が20万円未満で(3)以外のもの

→10万円から199,999円までのもの

事業年度ごとに一括して3年間で償却することができます

 ※残存価格はありません。

 例 今年度に取得した一括償却資産

 A 15万円 B 12万円 C18万円 合計 45万円

 45万円÷3年=15万円 償却限度額

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中小企業の少額減価償却資産の即時償却制度

 青色申告書を提出する中小企業者等が、平成15年4月1日から平成24年3月31日までの間に、取得価額30万円未満の減価償却資産を取得した場合には、取得価額の全額の損金算入ができる措置が講じられています。

(青色申告書を提出する個人事業者も適用できます)。

(4)償却計算の単位(規18)

資産の種類、耐用年数、償却方法のすべてが同一の場合は、種類の同じグループごとに償却限度超過額又は償却不足額の計算を行います。これを「グルーピング」といいます。

(5)償却超過額の認容(法31②)

普通償却不足額は会社が償却費として、もともと損金計上していないので別表四で減算処理できませんが、繰越償却超過額がある場合には、その範囲で減算(認容)することができます。

(繰越償却超過額がある場合の算式)

(1)償却限度額

(2)償却不足額~(1)-会社計上償却費

(3)認容額~(2)と繰越償却超過額のうちいずれか少ない金額∴×××償却超過額認容(減算・留保)

「考え方」

・法人税法上、減価償却費は「償却費として損金経理した金額」のうち繰入限度額に達するまでの金額は損金の額に算入される。(法31①)

・「償却費として損金経理した金額」には過年度の繰越償却超過額も含まれる。(法31②)

・例えば償却限度額500円、会社計上償却費300円、繰越償却超過額160円の場合には、会社計上償却費300円は「償却費として損金経理した金額」のうち償却限度額500円の範囲内であるため会社の経理どおり損金となる(もともと費用となっているため申告調整不要)。

 また「償却費として損金経理した金額」に含まれる過年度の繰越償却超過額160円は、償却限度額に残りがあるため(500円-300円=200円=償却不足額)、会社は費用化していないが損金となり減算する。

 なお、更に残った償却限度額(500円-300円-160円=40円=償却不足額)は会社が償却費として損金経理をした金額ではないので、原則どおり損金とはならない。

(別表四で減算することはできない。)

9.届出(令51②)

会社設立の日等の属する事業年度の確定申告書の提出期限までに、その償却方法を書面により納税地の所轄税務署長に届出なければなりません。提出のない場合は法定償却方法が適用されます。

10.償却方法の変更(令52)

 償却の方法を変更しようとする場合には,その新たな償却方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日までに,その旨,変更しようとする理由等を記載した申請書を,納税地の所轄税務署長に提出してその承認を受けることになります。

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